西郷は体の大きな人で、相撲も強かったんですが、

１２，３歳のときに相撲をとっていて、肘をおりました。

剣術もできないし、相撲もできなくなった。

しかし、考えたんですね。

　自分は相撲も取れないような人間だけれども、

相撲の上手な人、知恵のある人、学問がある人が集まって

くれば大きな仕事ができるんじゃないかと。

　私たちは動物ですから、おなかがすけば食欲が出て、

物を食べる。全部欲望のかたまりですね。

　しかし、そこで頑張って、「私」のかたまりの２％

ほどでいいから、空気を圧縮する。バキュームというか、

真空をつくります。その２％の真空とは、無私の部分ですね。

そこに人が寄ってくる。西郷を西郷たらしめているのは、

その２％の頑張りです。そこに人が吸い寄せられていく。

西郷という人は、そのコツを知っていたようですね。


（司馬遼太郎が語る日本Ｐ１０３ ・

週間朝日１９９６年１１月２０日増刊号） 　
　　　　　　　　 　　 　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　平田会計事務所　平田清隆
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　 平成１８年５月１７日